(未来同居はるあべです)






この前2人で行ったスーパーで小さい鏡餅を見つけた。最近ちまっこいものを見るとなんだか無性にあいつを思い出す。170はこえてるから男としては良いんだろうけど、それでも俺から見れば小さいもんだ。腕の中にすっぽり収まる感触を思い出して、笑った。



「何笑ってんですか気持ち悪い」



そう言って振り向いた隆也は相変わらず口が悪い。去年も今年も、あの生意気さは結局治らなかった。来年はもう少し素直になってもらおうと思うけれど、とりあえず今は台所に立つエプロンの後ろ姿が可愛いので許してやる。赤いシンプルな柄は、新婚夫婦っぽいとこがお気に入り。




「隆也ー隆也ー」


「あーもう引っ付かないでください!」




火傷したらどうすんですかと喚く今日はあと数時間で終わる。鍋の中では年越し蕎麦が踊っている。後ろから抱き締めた体はやっぱり小さくて、細い。来年はもう少し肉を付けさせようと心に決めた。(早速来年の目標をつくるなんて俺すげー!)




「隆也、明日鏡餅買いに行こうぜ」


「あぁ・・・そういえば買ってませんでしたね」


「んで、お雑煮作る!!菜っぱと鶏肉入れて!!」


「元希さんち鶏肉入れるんですか?」


「お前んち入れねーの?絶対入れるだろ。つかお前はもっと肉をつけろ!」


「はぁ?」




隆也の作った蕎麦は美味しい。こいつは家事を一通り何でもこなしてしまうからすごいと思う。一年間一人暮らししてたころの食生活は我ながら酷いものだったので、改めてこいつと一緒に暮らしていて本当に良かったと思った。それを隆也に言ったら、あんた無理やり同居に引きずりこんだんでしょうがと呆れられた。




テレビの格闘技番組が終わって一息ついた後(やっぱ最高だぜボビー!)、時計を見ると既に0時5分前だった。隆也もそれに気付いたようで、もう少しですね、なんて呟く。




「こうやって年越しを一緒に過ごすのなんて初めてじゃないですか?」


「去年は年明けと同時に電話しただろ」


「そんで、あまりにも回線が混みすぎて、途中でぶちんって切れちゃったんですよね」




思い出してくすくすと笑う隆也を後ろに向かせて、広い額に口付ける。すぐに切れてしまう電波のような距離じゃなくて、腕の中には確かに愛しい存在がいる。それはまるでふわふわの布団にくるまったような幸せ。大きくはないけど中身いっぱいの最高級品だ。そのまま瞼にも口付けると、意図に気付いたのか隆也が苦い顔をした。ベタ過ぎるんですよあんたはとぼやくくせに、頭を撫でると無意識にすり寄ってくる隆也が、これからもずっと変わらずに側にいて欲しいと思った。頬に、首筋に、戯れのように口付ける。でも、肝心な場所にはやってやらない。わかってはいるはずなのに、紅くなる顔が、催促するような唇が、かわいいと心底思った。





「なぁ、カウントダウンしようぜ」


「・・・わかりましたよ」





じゅう、きゅう、声が重なる、
はち、なな、頬に手を添える、
ろく、ご、よん、隆也が目を閉じる、




さん、に、いち、










































07/12/31    一菜