(優しい世界が欲しかった。恐れないなら涙をください)











世界は平らに広がっていて、その果てには怪物が大きな口を開けていると昔の人は考えたらしい。現に地球は丸いし、怪物も存在しない。けれども、ここは確かに世界の果てだった。





「待てよタカヤ!!」





追いかけてくる元希さんから必死に逃げる。後ろから届く叫び声は転落の予兆だ。街に出て1人で買い物をしていた時に、元希さんとばったり会ってしまった。あの春の試合で再会して以来、会わないように最大限努力してきたのに、こんなのってない。後ろから足音が近づいてくる。俺は今世界の果ての崖っぷちを走っている。捕まったら最後、崖の下に真っ逆さまだ。





「待てって言ってんだろ!!!」





その声に立ち止まってしまいたい自分を叱咤する。捕まってはいけない。捕まったら俺の世界が終わってしまう。けれども、叫び声は濁流となって俺を崖へと押し流す。あんな必死な声、聞いたこともない。





「タカヤ!!」





息が切れる。脚がもつれる。同じ野球部員でも体格とか才能とかいろんなものが絡まりあって俺に巻き付いてくる。その証拠に後ろから聞こえる足音はさっきよりも格段に近づいていて、









「・・・捕まえた」





グイと腕を掴まれて、汗ばんだ体を思い切り抱き締められた。









「っ離せ・・・」




「嫌だ」




「離せよ!!」




「うるせぇ!!」








耳元で叫ばれて、うるさいと思う前に吃驚して体が竦んでしまった。早く逃げろと頭の中で警告音が鳴り響く。けれども抱きしめる腕は力強くて、それ以前に俺は体を動かすことができなかった。それは、縋るように弱々しく、元希さんが肩に顔を埋めるもんだから、









「頼むよ・・・」









ああ、そんな声だすなよ馬鹿野郎。あんたらしくもない。あんたはいつも無駄に傲慢な俺様口調で喋ってくれないと困るんだよ気持ち悪い。そう内心で罵っても、反論する術を忘れたかのように口は動かない。抵抗することを止めた体はゆっくりと確実に崖へと流されていく。世界の終わりまで秒読み開始。









疑問符。


終わるのはなんだ?






(意地っ張りで不器用で、分かり合えなかった俺の世界)















「タカヤ」




「タカヤ、タカヤ」




「あのさ、」











「俺、お前のこと好きだ」














目を閉じる。耳をすます。




ああ、もう、いいや。














彼の腕の中で体を反転させてギュッと抱きついたら、びっくりしたような間抜け面が頭上にあって思わずくすりと笑ってしまった。俺もですよなんて囁けば、心底嬉しそうな子供みたいな笑顔にやられて、俺はどうしようもない恋に紐なしバンジージャンプした。













崖から落ちた先にあったのは、怪物の大きな口じゃなくて、抱きとめる元希さんの大好きな笑顔でした。












(優しい世界を手に入れた。とびっきりの愛をください!)



































ハローニューワールド


























電波すぎて訳がわからない^^



07/11/16    一菜