「宇宙はきっと神様のでっかいマントで、俺らはきっとそこに寄生してるダニみたいなもんなんだよ。あ、ミジンコかな?」




水谷の言うことが一々鬱陶しいのはいつものことだ。それは水谷が水谷であり、クソレがクソレである以上どうしようもないことで、今さら何も言う必要はない。今も水谷は、相変わらずへらへらした笑顔で笑っている。




「悲しいねー。俺らこんなに必死に生きてるのに所詮ミジンコなんだよ。」


「いいから黙ってさっさと手を動かせ」




むきー!と唸る水谷の目の前には殆ど進んでいない数学の課題。練習疲れでいつものように爆睡していた所、今日に限って機嫌が悪かった数学教師の逆鱗に触れたらしく、ありがたいゲンコツと共にプリント5枚を頂戴したのだ。だからお前はクソレなんだ水谷。ちなみに俺は数学では寝ない。数学では。




「こんなに頑張ってるふみき君にこの仕打ち!!これってヒドいよね、神様と教師の職権乱用だよね、そう思わない阿部!?」


「無駄口叩く余裕があんなら俺は部活行くぞ」


「ぎゃぁー!!!」




待って阿部かわいそうなふみき君を置いていかないで大好きだからー!
情けなくまたプリントに向かう水谷の頭を見つめながら、俺はさっきの水谷の言葉を反芻する。
ほら、また、簡単にあんなことを言う。その度に少しだけ心臓が跳ねてしまう俺に気付いていないくせに。そんな自分が女々しくて嫌いだなんて思っているなんて考えてさえいないくせに。お前の声が何回も脳内でリピートされることがどんなに悔しいか、知らない、くせに、




「あーべ?」


いつの間にかまた課題をほっぽりだしてこちらを見上げている水谷は、






「大好きだよ」






そう言って、またへらへらと笑うもんだから、俺はその頭を殴りつける以外の方法がわからなくなるんだ。








(その声が、言葉が好きだなんて、絶対言ってやらない)
(クソレに心動かされる俺の気持ちも考えてみろ)
(所詮俺らはミジンコ同士)
























ミジンコの恋









何も考えずに書くとこうなる。




07/10/28    一菜